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声帯結節の治療
声をよく使う職業の方、特に【学校の先生】【幼稚園・保育所の先生】【大学・専門学校の講師】【歌手・俳優業などプロフェッショナルの方】においては一度は耳にしたことがある病名かもしれません。
当院での患者さんにおいても特によく診察する声帯の病気の一つです。
声帯にできる"ペンだこ"
声をたくさん使うほど声帯に負担がかかり声帯が腫れやすくなります。
1日で回復する程度であれば問題はありませんが、毎日声を出さなければならない職業の方では体調が悪い時に無理をしたり、風邪で声帯が腫れてしまう事もあります。それでも仕事を休めず毎日声を出し続けた結果、声帯のむくみが取れず残ってしまった状態が声帯結節です。字を書きすぎた時にできる「ペンだこ」に例えられる事もあります。
声帯結節の症状は声がガラガラする、高い声が掠れる、声を出すのに力がいる、夕方になると喉が疲れる、などです。学校の先生などは平日に声を使いますので週末になり休めると月曜日にはよくなると言うことを繰り返すことが多いです。
一番の治療は黙ることだが
声帯結節に対する治療は「声の休息・安静」です。一般的に「黙っておきましょう」「喋らないように」という指導がなされます。・・・・しかし、それが難しいですね。声を使いすぎることが原因でこの病気になるのであるのだから原因を取り除けば良いわけですが、それが仕事である以上は声を使わないという選択肢が無いということが大きな問題になります。
言語聴覚士との治療により
当院での治療法としてこうした背景に考慮して「黙っておきなさい」ということを極力避けて治療できないかと考えています。声帯に出血が起こっている場合など急激な悪化があった場合に数日間「黙っておきなさい」ということはあります。しかし沈黙は長くても1週間以内にしています。それは仕事に支障をきたさないように長い目で改善させていくとの考え方からです。
言語聴覚士による音声治療を主に行っています。ボイストレーニングとの違いは呼吸方法を含めた発声方法のみならず、声のケアの方法、職場環境や心理的な問題への傾聴なども含まれます。言語聴覚士とともに40分〜1時間を1セットとして行ってまいります。
実証された結果
当院でまとめた報告(参考文献)では約7割の方が音声治療によって声の満足が得られています。できれば2週間に一度程度の通院で経過を見ていくのが望ましいと考えていますが、元々は忙しく声を使われている方の病気ですので忙しくて通えなくなる事もありますので患者さんによって臨機応変に対応しています。
音声治療によって満足が得られなかった3割の方に対して手術を行っています。当院は大阪府済生会中津病院(大阪市北区)と連携しており、木曜日のクリニック休診日に院長による執刀を行なっています。声帯結節の手術は効果があり、音声治療後に行った手術では満足を得られている結果となっております。ただし炎症が強く声帯瘢痕と言われる硬い声帯になっている場合などは個別の対応が必要になることがあります。
【参考文献】
森 祐子, 二村吉継, 南部由加里, 他:声帯結節症に対する音声治療の検討 -保存的治療の効果と限界-,音声言語医学, 2020(in press)