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歌声の治療
歌声の治療はどうするのか? という疑問をいただくことがあり、当院での理念および診療方針をお話しいたします。ボイスクリニックだから、ボイストレーニングもしてくれるのか? というお問い合わせをいただくことがあります。
「音声治療」にはボイストレーニングの要素が多く含まれ、一般的な歌声のレッスンとしてのボイストレーニングではありませんが、声の治療としての発声訓練を行なっております。
病気であるかどうか?
当院での治療は保険診療で行なっているため、基本は「病気であること」を治療することになります。ボイストレーニングなど訓練による歌い方の「習得」と「治療」を区別しています。声の状態が以前と比較して悪くなっていて生活(仕事)に支障があるという状況を「病気である」と判断します。
歌手の方がいつもは歌えているものが声帯炎や体調の問題など様々な理由で歌えなくなっている状況にはその理由を考えるとともに治療が必要になります。一方、趣味で歌を習っているけれど高い声が出せない、うまく歌えない、といったことは「治療」の対象とはなりません。技術の習得は個々のボイストレーニングや練習をしていただくことになります。
しかし一方で病気であるかどうかは自分でわからないこともありますし、初めてお越しになる方がどのような歌を歌われているのかなど、どのようにお困りなのかはすぐに判断できないという面もあります。
原因を考えた上でアドバイスをする事までは行えますのでご相談ください。
プロフェッショナルの方への治療
歌手の方にはそのジャンルは音楽学部を卒業している声楽家、伝統芸能としての邦楽歌手、ポップス歌手、ジャズ歌手、ロック歌手、アイドル歌手など様々で、私は歌の専門家ではないので歌い方を指導するわけではありませんし、それぞれに芸術性の違いもあります。
声帯の状態から医学的な治療による解決ができる場合もあれば、歌唱の問題は難しい悩みの場合もあります。解決法について相談やアドバイスを行いますが、歌唱法や芸術性の訓練に関しては歌の教師、トレーナーによる稽古など総合的に考えることも必要であると思います。
悩みの解決の一助になるような診療を心がけておりますので、ご相談ください。
声の専門家だからわかること
力の入れ具合や声帯の振動の仕方などカメラでの動きでわかる場合もありますし、声帯にできたポリープや結節などの異常は目に見えますのでわかりやすいこともあります。しかし歌の響きは呼吸や咽頭の動きによって共鳴をコントロールしていますので、声帯の所見だけでは捕らえられないこともあります。
上咽頭の治療(EAT療法・Bspot治療)の応用
上咽頭の治療(EAT療法・B spot治療)が最近注目されている治療法です。上咽頭は鼻の一番奥、また口からは口蓋垂(のどちんこ)の裏側にあたる部分ですので、カメラを入れないと見えない部分です。
歌を歌う場合にはこの部分の共鳴が重要になり、うまく使えないと良い響きが得られない、声が出にくい、鼻が詰まるなどの症状として出ることがあります。声帯に異常がないような音声障害・歌唱障害の場合では上咽頭の治療が効果的であることも多く経験していますので、思い当たる方はご相談ください。(上咽頭に塩化亜鉛を塗る方法ですが、コロナウイルス 感染症での感染対策により飛沫が飛ぶことを防ぐため、マスクをしたまま鼻からおこなっています)